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ショッピングで意識して
「昨日の話だけど。」
「えっ?」
「ほら、れなちゃんの恋愛スキャンダル」
「あっ、うん。どうしようか。まだ、リーダーとも話せていないけど。年明け、クライアントに話す時にはいくつかリストアップしないと、、、」
柚は、慌ててフルーツサラダを頬張った。正直若干忘れていた。そんな事より、昨夜から今朝のめまぐるしい出来事にに落ち着きが取り戻せずにいた、、、。
「年末ライブで何組か同じ事務所のグループに会うから、話してみようか?SEKAIで良ければ都合つけるけど、イメージ合わないでしょう?」
「うーん。そうだよね。女性はかなり集まりそうだけど」
「あっ、来年から始まるヒーローものに出る堀くんは後輩だよ。なんなら、ダンシンジャー出しちゃう?」
「ダンシンジャー?」
「来季から始まる子供向けの戦隊ヒーローだよ。ダンスしながら敵をやっつけるらしいよ!」
「戦隊ヒーロー!??」
戦隊ヒーローは、キャスティングで候補に上がり、クライアントからも希望があったが、スケジュールの調整がつかなくて断念したのだ。
「うん。堀くん、うちが今推したい一人だし、メインだからうちの事務所が動けば何とかなるんじゃないかな」
「ありがたいけどー、、、。カイくんに頼ってばかりでなんか情けないなぁ」
「柚さんのためなら何でもする。って言ったじゃない。ちなみに、柚さんのためにするって言うのは、最終的には彼氏にしてもらいたいっていう、下心だから、柚さんも利用してくれて良いんだよ?」
カイがそんな風に言うのは、柚に気を遣わせない為だと、分かる。
「お言葉に甘えようかな?」
「うん、話してみるよ!」
カイの作った朝食は、どれも見た目も味もオシャレなカフェのように美味しかった。
朝食の後カイが、柚を実家まで送りたいと言い出した。カイのこの提案で柚の実家へ二人、車で向かうことになった。
「へぇ、埼玉、東京の隣なのに、この辺りは田舎だねぇ」
「すみませんね、田舎で、、、」
「どこかオススメスポットないの?デートしたいな」
「ねぇ、見てよこの見渡す限りの畑。デートスポットがあるわけないでしょう?」
「一つくらいあるでしょう?今までどこでデートしてたのー?!あっ、今日友達とはどこで会うの?」
「近くの、、、ショッピングモール」
「いいじゃん!そこ行こうよ!」
すっかりカイのペースに押されてショッピングモールに来てしまったが、、、カイは、KAIってバレること気にしないのだろうか、、、。
柚は、心配だった。
しかも、いつ自分の知り合いに会うかもしれないショッピングモールで、、、。カイはとても楽しそうだ。
「ねぇ、これはどう??」
決してハイブランドではない服や、小物を合わせてみては柚を振り返る。普段はもっと高級なものを身につけているだろうに。
「にっ似合うよ」
何着ていても、何持っていてもサマになるってこういうことを言うんだな。柚はカイを見て改めて思った。今までどれだけ会社でカイを見ていなかったがよくわかる、、、。
「一年近く一緒にいたのに、、、」
「えっ?」
カイが深めの帽子を被りながら聞き返した。
「不思議。今まで何とも思わなかったのに、カイ君がすごく、、かっ、カッコよく見える、、、」
「それって、僕のこと意識してくれてるの?」
帽子のツバに隠れてカイは柚の唇ギリギリまで顔を近づけた。ハッとなった柚は自分の顔が一気に赤らんでいくのがわかった。
「もっと。もっとイシキして。他の誰も目に入らないくらいに。」
耳元で囁くとカイはまた帽子を整えて見せた。
「ゆうー??」
聞き覚えのある声が柚を呼んだ。
慌てて振り返ると、高校の同級生が三人。半ば探るように柚を見ていた。
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