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僕と君とヤキモチと
望と、友香は高校の同級生、咲は中学からの同級生だ。再開したタイミングの流れで、三人と柚、カイで夕食をとることになった。当然、カイへの集中攻撃である。
二人は付き合ってるの?
付き合ってどのくらい?どちらから?
出会いは?職業は?えっ、年下なの!?
結婚は?家は!??
まるで実家の両親かと思うほど三人の質問は止まない。その度にカイは、笑顔で。付き合ってってアタックしてるんだけどなかなか返事してくれなくて。僕の方が長年片想いなんで、できたらすぐにでも、恋人、家族になりたい。とニコニコ応えていた。まるで、外堀を埋めつつ、柚に自分の気持ちを証明するように。
「へぇ、良いじゃない。こんなに想われて。何で付き合わないの?」
咲が不思議そうに柚を見る。
「気持ちは嬉しいんだけど、その、何て言うかカイ君みたいな子と隣に並ぶ自信が、、、」
「何で?確かにイケメン風ではあるけど、年下なだけで、そこまで柚が引け目に感じることある?」
咲は続ける
「えーっと、、、それは」
「まぁまぁ、咲さんありがとう。僕は、待つから大丈夫。もし柚さんがそんな風に思う理由がもしアレなら、全然未練ないし即辞めるけどね」
「アレ!?」
三人は思い切り前のめりになった。
「あっ、僕趣味でインディーズバンドしてて、ちょっと一部で名前が知られてるんだ。仲間内だけだけどね。柚さん気にしーだから、大層なアーティストと混同しちゃってるんだよねー」
「あぁ、、、趣味で、、、バンド、、、」
今度は三人は引き潮のごとくサッと興味を無くしたようだ。インディーズじゃないし、思い切り人気バンドだし。と、柚は自分の中で呟いた。
「柚さんて、学生時代どんなだった?彼氏とかいたの?」
カイが話題を切り替えた。
「いたよー。長かったよね?」
望がなんなく答える。
「ちょっと!」
柚は勿論止めるが、カイが興味を示すので三人は面白がって答えた。柚が高校時代付き合った男子は同級生。クラスで人気者でリーダータイプの福原君の、親友の浅田君だ。浅田君は真面目で、穏やかで。明るくてお調子者の福原君のストッパーだった。一緒に委員になったのがきっかけで親しくなり付き合うようになった。高校時代の交際はお互いの恥ずかしさもあり、ただただ一緒に帰る、そんな日々の繰り返しだった。
「でもー、言って良いのかなー??柚、ファーストキスだったよねー!」
程よくお酒も入り友香が饒舌に話す。その後、修学旅行ではニ人で京都をまわったとか、受験等があり別れたが、柚はしばらく引きずっていたとか、柚も、浅田君も東京に就職したから社会人になってから再開したのではとか、だいたいの柚の学生時代概略を披露された。
「へぇ。」
カイは手元のグラスを開けた。
今日は楽しかったーっ!柚、カイ君良い人じゃん!早くokしないと誰かに取られちゃうよ!三人はそれぞれにそのようなことを言って家に入っていった。カイがみんなを自宅まで送って行き、最後に柚の実家まで送ってくれた。
「昨日の雪、そんなに積もらなかったね。昨日はあんなに降っていたのに。」
カイが荷物を降ろしながら言う。
「そうだね。でも道が凍ったらカイくん大変だし、良かったよ!」
「今日はありがとう」
カイが柚の荷物を差し出した。
「こちらこそ、ありがとう。」
「柚さんと朝起きて、ご飯食べて、友達に会って、今日は楽しかった。今度ここに来る時は、ご両親にも挨拶させてもらえるような関係になりたい。」
カイが柚を見つめながら言った。
「うん、ちゃんと考えるから。」
「今年は、お世話になりました」
「こちらこそ、お世話になりました」
冬の澄んだ空気が2人を包んでいた。
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