ミーティングにブレイクを

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ミーティングにブレイクを

「それから、しばらくして柚さん来なくなったよね」 「あっ、そうだったねっ。半年くらい学校の都合で来れなかった」 「その間に父さんが迎えに来て僕は引き取られたんだ。少しずつ聞こえてきた耳も元通り聞こえるようなるまで時間がかかったから、柚さんにお礼も言えなくて」 「そうか。だから、私が来るようになった時には、カイくん居なくなっちゃったんだね」 「うん。さっ、今日はここまで。長々と思い出話してごめんね。柚さんに改めてここでありがとうって言いたかったんだ」 「そんな、何にもしてないけど、、、」 「一人の人として、疎ましがったりせずに扱ってくれた。お互いにそこにいるだけの時間が僕を癒してくれたんだよ。ありがとう。その時間があったから、嫌っていた父さんにも、音楽にもまた向き合えた。あっ、この話はまた今度」  まだそんなに遅い時間ではないが、二人が施設を出た時にはすっかり辺りは暗くなっていた。柚は、カイの運転する車に乗り、自宅まで送ってもらった。二人きりの車内では、カイは、互いの共通の話題である社内の話や、友人の話をした。 先ほどまでの影のあるカイの姿はすっかり消えていた。 「はぁー。長かった、、、」  シャワーを、浴びながら柚は独り言を呟く。 まさか、自分がカイにとってそれほどの影響があったとは。聞いてもなお、実感がない。自分には、たまたま感が抜けなかったが、もし過去の淋しかったカイに自分が何かできていたのなら嬉しいと思う。明日からまた普通のカイになっているだろうか?そんな事を考えながら、柚は眠りについた。      週が明けて月曜日。週末の東洋社のキッズイベントが本格的に動き出した。 「――では、そういうことで、ヘッドは中條、補佐に、斉藤、井口、それから水瀬。オペレーションは、三森、野口、南雲で進めてくれ。人手が足りなかったら他の者も手伝うように!」 「はいっ!!」  オフィスのみんなが、活気付いていた。自分達が考え、捻り出し、作り上げた企画が形になっていく。そのワクワクした高揚感は、イベント会社の社員にとっては何にもかえがたかった。 「それでは、内容を整理します。イベントは大きく三つ。まず、通信教育を実体験していただく親子ブースの設営、二つめは、引きこもりや学習が困難なお子さんへのオンラインイベント、三つめはうちのオリジナル企画〈環境ワークショップとスタンプラリー〉です。全体のイベントは、子供祭りを開催し、その中で三つの企画を柱として運営します。」  プロジェクトチームの一同は、みなやる気に満ちた表情をしていた。 「では、それぞれチームに分かれて準備を進めてください。お祭りに呼ぶゲストの予算も取っているので、リストからスケジュール確認してピックアップしてください。」  一同の、歯切れの良い返事で短いミーティングを終えると 「僕も、頑張ります!恋も、仕事も!」と、カイが爽やかに淹れたての、カフェラテを渡して来た。 (このカフェラテどこから出て来た!?)
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