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伝えたいこと
千景には灰崎と話すことがあると連絡し、別々に帰ることにした。
「ちょっとそこで話そうぜ」
通り道の公園に行き、俺は自販機で暖かい飲み物を2つ買うと一つを灰崎に渡した。
ベンチに座り隣りを見ると少し緊張しているように見えた。
「…灰崎はさ、人を敵かなんかだと思ってる?」
「お前以外は」
「なんで?なんか理由あんだろ?」
「別にない」
ないわけないだろ。
「…言いたくないならいいけど。人ってみんな違うだろ。見た目もそうだし性格だって、良いとこもあれば悪いとこもある。俺もそうだしみんなそうじゃん」
灰崎は黙って聞いていた。
「本人じゃどうしようもない悩みってあるだろ?俺は周りを気にしすぎるって言われるし、実は身長が伸びないのが悩みだし少し太ってきてるのも気にしてる」
「正孝は太ってない」
「でも、俺は気にしてる。灰崎は触ると冷たいとかあとコミュニケーションが苦手なのかなと思う。でも、それが人間だろ。だから優しくできるししたいと思うんだ。誰かが得したら誰かが損する。誰かには幸せでも誰かには不幸だったりするよな」
「…正孝は俺がいて不幸か?」
「違う!俺はお前と仲良くなれて良かったと思ってるよ。本気でさ」
両手で握りしめた熱い位のペットボトルのお茶を見つめた。
「…ただ、人を傷付けるのは我慢できない。灰崎は一方的に人に攻撃してるみたいで、それが正直しんどい。俺にだけ優しくされても、そんなお前に甘えたいとも思わないし……嬉しくもなんともない。
それが出来ないってなら、、、、、なぁ、灰崎」
膝の上で強く握られた灰崎の拳の上に手を乗せた。
「今のままじゃ、俺がお前と同じ気持ちになることはないし、この先も変わらないと思う。…考えてくんないかな」
俺は喧嘩とか争いが得意じゃない。その流れになりそうになると自分が折れたり避けようとする。
でも、これで灰崎が離れたとしても伝えたかったし、遅かれ早かれこのままじゃお互いダメになると思った。
「少なくとも学校の皆はお前や俺と同じってこと。傷付かない人なんていねぇんだよ」
それから灰崎からの返事はなく、俺は立ち上がるとじゃあなと背を向けた。
途中立ち止まり振り返ったがついて来てはいなかった。
嫌われたか。
胸がズキンと痛んだが覚悟の上だと再び歩き出した。
何か伝わってればいいけど。
しかし次の日、灰崎は学校を休んだ。
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