どうして

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どうして

休んだ2日目、学校が終わると俺は灰崎のアパートの前に立っていた。 まさか、またこんなに早く来る事になるとは。 学校来ねぇの完全に俺のせいだよな。 チャイムを押すが反応はなく、ドアノブを回すがやはり開いていない。 鍵を取り出して見つめた。 いやいや、これいくら鍵を預かってても不法侵入的なのにあたるんじゃ。 やめよ。 鞄にしまい来た道に足先を向けた。 「あれぇ?正孝くんじゃん!」 この陽気な声は… 顔を上げると灰崎のお兄さんが階段を登り切った所にいた。 「雪と最近連絡取れないから心配で来ちゃったんだけど、会った?」 お兄さんとも連絡取ってないのか。 まぁ、あれから俺もしてねぇけど。 「あ、いえ。俺は帰るんで」 「そ〜んな冷たい事言わないでさぁ」 ガシッと腕を掴まれると灰崎の部屋の前まで戻された。 「雪ー!いるのは分かってるよ〜」 取り立て屋か。 「開けないと正孝くん食べちゃうよ〜」 食べっ!!? バンッ!!! 勢い良くドアが開き誰かが飛び出してきた。 「雪、、、どしたの、それ」 俺は口をあんぐりして言葉も出なかった。 灰崎の髪が黒くなっていた。 ボサボサで長めだった髪も短くなっていて顔も隠れていない。 「あ…」 灰崎は忘れてたのか、扉を閉めようとしたがスッとお兄さんが足を差し込み阻止した。 「まさか、それしたから休んだのか?」 俺が聞くと、少し目を泳がせ小さくコクンと頷いた。 「似合うじゃん!ねぇ、正孝くんもそう思うでしょ?」 ニコニコしながらお兄さんが俺を覗き込む。 「は…はい」 別人の様で、俺は真っ直ぐ見ることが出来なかった。 すると、奥から人の声が聞こえてきた。 「じゃあ私もう帰るね〜」 しかも女の人の声。 ドクン…ッ 部屋に入れてるってことは…。 これタイミング最悪じゃん。 だからチャイム押しても出なかったのか。 「あー、俺帰ります」 俺はそう言うと背中を向けてさっさと歩き出した。 「正孝っ!」 灰崎の声が聞こえたが足を止めなかった。
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