どうして

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お兄さんは苦笑いをして灰崎の肩を叩いた。 「雪、兄ちゃん嫌わないでよ」 「うるせぇ、どけ」 兄を突き飛ばすと後を追って走ってきて階段下で腕を掴まれた。 「正孝!」 「付いてくんな!!」 俺は苛立っていた。 何が2人の部屋だ。 「正孝」 2人とも息が荒い。 何なんだよ、クソっ!! 落ち着け。落ち着け。 俺はフーっと息を吐くと笑って振り向いた。 「なんかほら、休んでたから心配でさ。でもいろいろ元気そうだから良かったよ。明日は来れんだろ」 しかし、手は離れない。 「いろいろってなに?」 いや、そこは俺が聞くことだろ。 「あー、お兄さん大事な用かもしれないぞ。戻れよ」 顔が良く見えるようになったせいか、何か言いたげな感じだった。俺はもう一度笑った。 この気まずい空気を変えたかった。 「いいじゃん、髪。イメチェンだな」 「あ…うん」 「すげぇ似合ってるよ、驚いたけどかっこいい」 ホッとしたように目が細くなった。 肌が白い分、物凄く黒が映えていて綺麗だった。 「じゃあ、また明日な」 俺は隙を見て手をやんわり振り払った。 笑うことがこんなに辛いと思うことはあまりない。 「正孝!俺、変わるから!」 めずらしく大きな声を出していた。 「なんだよ、もう十分変わってんじゃん」 「ちゃんと見てろよ!」 「おう!」 良く分からなかったが空返事をして頷いた。 灰崎は戻ると部屋の前の手すりに肘をついたお兄さんがにっこり笑って待っていた。 「かっこいいって言われたね、良かったね」 「…」 薄着で飛び出したせいか誤魔化すためか鼻を啜った。 「明日ちゃんと言い訳しといた方がいいよぉ」 「うるせぇ。さっさと終わらせて帰れ」 「はいはい」
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