第6話 保健室へ

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第6話 保健室へ

 友達が一人も居なかった僕は昼は屋上で食べるようになった。この学校には食堂もあるけれど人が多い所はどうしても苦手で……そんな僕の気持ちが伝わったのか執事の仙道さんが家政婦さんに僕のお弁当を作るように頼んでくれたみたいで。波留くんのも作っているから別に負担ではないと言ってくれてありがたいなと思った。    そんなわけで僕は毎日午前中の授業が終わるとここに来て静かに過ごしているんだ。  本当は友達を作って高校生らしく過ごしたいのだけれど。  ぼーっとしているときにふと担任に養護教諭の先生のところへ行きなさいと言われていたのを思い出した。 「やばっ!!」  先生にはちゃんと僕の体の事を伝えないといけないんんだった。  僕は勢いよく立ちあがると保健室へ向かった。  保健室の場所は僕のクラスのある建物の一階の端のほうにある。ちなみに僕のクラスは三階にあって毎日階段の上り下りがちょっときつい。 「失礼します」 そっと声をかけてドアを開くとまだ二十代ぐらいの男らしい顔つきの白衣を着た男性がいた。 「あの、僕この春から通信科から普通科に転入してきた芦屋柚月です。もっと早くここに来ないといけなかったのに遅くなってしまいすみませんでした」  ぺこっと素早く頭を下げた。 「君か。待っていたよ。西園寺院長からも頼まれていたからね。僕は養護教諭の難波直樹(なんば なおき)だ。よろしく」  難波先生は男らしい彫りの深い顔をしているけれど話し方や雰囲気が柔らかく優しそうな人なのかなと思った。 「難波先生、よろしくお願いします。僕先生に頼みがあって。僕、みんなには病気のこと秘密にしておきたくて……病気のことがばれちゃとと普通の高校生活が遅れなくなっちゃうので絶対に秘密にしてほしいんです。お願いします」  もう一度深く頭を下げる。  難波先生は困ったように眉を下げ、顎に手を乗せ考え込んだ。 「うーん、みんなに秘密にするのはあんまりおすすめ出来ないけれど。西園寺院長からも秘密にしておきたくて西園寺くんにも秘密にしていると聞いているからなあ……わかった。秘密にするのには協力するけれど、ちゃんと体調が悪ければここに来ること、何か不安なことがあれば僕に相談すること。ちゃんとこれを守れるか?」 「守ります!」 「オッケー。じゃあ体調が悪い時や治療方針などが変わった時などは早めに教えてもらえるかな。今どんな薬を飲んでいるのかな。頓服薬とかもらっていたらどんなのを出されているのか知りたいから見せてくれるか」 「はい」  僕はランチボックスを入れていた袋に処方された薬と薬の説明書を入れていたのでそれを難波先生に渡した。 「なるほど……今飲んでいるのはこれなんだね」 渡した薬と説明書の紙を僕に返しながらそう言った。 「芦屋くん、素敵な高校生活が遅れるように祈っているよ」 「ありがとうございます。これからよろしくお願いします」    無事難波先生へ挨拶することが出来てほっとした。午後は美術の時間だからそろそろ行かなければ。 「先生、では授業があるので戻ります」  保健室を出ると急いで教室へ戻り美術室へと向かった。  
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