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加奈は、ぽかんとした顔でしばらく春木を見ていた。しかし、すぐに和むような笑顔へと変わる。
「うん。そうだよ」
彼女の表情は少し、悲しげであった。
春木はそれに気づき、小説の内容を思い返す。誰でも知っているような有名な作品だからすぐに思い出せた。
最後、主人公が愛していたヒロインが死んでしまう、悲しい物語である。
「どんなところが好きなの?」
春木の緊張はいつしかなくなっていた。
気付けば彼女との会話に花を咲かせていた。
その日以降、春木は放課後、小説を読みながら心の片隅で、加奈のことを待つようになった。
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