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「雄平、もしかして彼女できたの?
んなわけないよね?
だから観念して私にしときなよー。
幼馴染でお互い知らない仲じゃないんだしさ」
幼馴染の朱理はそう言って笑った。
「やめてくれ。幼馴染相手に、そんなの考えられない」
俺は不機嫌そうにそう言い、勢いよく車のドアを閉めると、その場から逃げるかのように急発進で駐車場を後にした。
「まさか、こんなとこで会うなんて…」
数分車を走らせ少し冷静になった俺は、そっけない対応をしてしまった朱理に罪悪感を感じながら呟いた。
そして、ペットボトルのコーヒーを買うために立ち寄ってはずのコンビニで、朱理に会って動揺して買う前に立ち去ってしまったことに今さら気づき、自分の情けなさにも腹を立てた。
朱理と出会ったのは、3ヶ月ぶり。
幼馴染なのでお互いの生活圏がモロ被り。
会わないように自宅近くを避けてわざわざ遠くのコンビニに寄ったのに、その駐車場で不運にも出会ってしまった。
車を停めた俺のすぐ横に停まっていた車に、店から出てきて乗ろうとしていたのが朱理だった。
よくよく思い返してみれば、隣に停まっていたのは、朱理の赤い軽自動車じゃないか。
気づけよ、俺。
朱理とは、幼稚園から高校までずっと同じ。
中学に入るまではむちゃくちゃ仲は良かった。
でも中学に入ってすぐ、関係が一変する。
朱理はバスケをしながらクラス委員にも立候補するような積極的な存在で、男子が女子のスカートを捲ったり揶揄ったりするのを、物怖じせず注意するなど、クラスの女子の中心的存在に早くもなっていた。
そして、我が強くて口もキツかったためか、クラスの男子から次第に疎まれるように。
『おい。男子みんなで、アイツを無視しようぜ』
クラスの男子のリーダー格が言ったその一言。
モブを自認していた俺はそれを止めることもできず、いつしか流されて俺も無視するように…。
まあそういうクラス内の男女の確執も、秋の文化祭や体育祭の達成感と共に生まれる謎の連帯感をきっかけに“和解”するんだけど、俺は、幼馴染のくせに無視してしまったという罪悪感のせいで、高一で再び同じクラスになるまで、朱理と素直に向き合えないままになってしまった。
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