神様がいるのなら

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松葉杖をついた朱理と朱理のお母さんが立っていた。 「雄平、何してんの?」 「へっ?おま、えっ?手術中じゃ…」 「捻挫で手術なんかしないよー」 「だって救急車で…」 「なんで私が救急車に乗ってたの知ってるの?てかさー、聞いてよ。私が今朝階段踏み外して転んだら、久しぶりに帰ってきてたお父さんが慌て救急車呼んじゃってさ。 “娘が頭打ってるかもしれん!”ってさ。 大袈裟だなーって。ねえ?」 朱理はそう言って笑うと、隣のお母さんと顔を見合わせて笑った。 「…なんだよ…。心配して損した」 どうやら、救急車で運ばれたのは正しかったものの、緊急手術を受けているのは、別の搬送者のことだったらしい。 だからか。受付の女性が、俺が“彼氏だ”と言ったら不思議そうな顔をしてたのは。 「お。雄平、私のこと心配してくれてたんだ」 朱理がニヤニヤしながら俺を見上げている。 「ち、ちげーよ…って、…違わないけど。 ま、とにかくさ。ホッとしたってことで。 俺、帰るわ」 「うん。心配してくれてありがとね」 朱理が“バイバイ”と手を振りながら微笑み、背中を向けようとしたので、俺は慌てて付け加えた。 「ああ。あ、今度大切な話があるから、朱理が落ち着いた頃に連絡するわ…」 すると、振り返った朱理はパァッと明るい表情を見せて頷いた。 「うん。待ってるね!私も雄平に聞きたいこと沢山あるから!」 松葉杖をつきながら帰っていく後ろ姿を見送りながら、俺は心の中で小さく呟いた。 “神様、ドロボー扱いしてごめんなさい” 了
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