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「朱理のヤツ、また一段と痩せて綺麗になってたな。しかも顔つきも…。
この3ヶ月で整形でもしたのかな?
って、んなわけねーか」
車を運転しながら、3ヶ月ぶりに会った朱理の姿を思い返し、記憶の中の朱理と比べてみる。
朱理は背丈は俺と同じほどだから、女の子としては高い方。バスケの影響か、高校一年までは、引き締まりつつもがっしりした体型だった。
それが高二の夏、一つ上の先輩たちの卒部と同じタイミングで突然バスケ部を退部してしまった。そして夏休み明けの二学期には、まるで別人のような出立ちに変わっていて、遅まきの“高校デビュー”を果たしていた。
なぜ朱理のことを、俺はここまで克明に覚えているのか。
それはやっぱり幼馴染だから…としか言いようがない。
お互い、幼稚園時代のおねしょの回数まで知ってる仲だ。
無視してる間も、俺は自然と朱理のことを目で追っていた。ただ、クラスメイトの“無視しようぜ”という提案を拒否できなかったという中一の時の自分がいつまでも許せなかった。
だから、昔と変わらず接してくる朱理との間に自分から線を引いて、極力関わらないようにしていたけど。
高校卒業後は近くの大学に進学した朱理。
大学生になっても俺への態度は変わらなかった。
高校卒業後、事務機器販売会社に就職してレンタルコピー機の点検や事務用品のセールをしている俺に対しても、街で出会えば相変わらずに接してくれた。
何せ住んでるのは同じ小学校の校区内。
自宅は少し離れていても、生活圏はモロ被り。
同世代が行くところは似通っているので、何処かで出会ってしまう。
そんな朱理と、今日会うまで3ヶ月も間が空いたのはなぜか。
それはちょうど3ヶ月。朱理に告白され、その後俺がずっと朱理のことを避けてたから。
『ずっと前から好き』
ある日突然言われた。
そして、俺はその返事に困り、中一の時のように、再び朱理から逃げ回っているのだ。
朱理のことを好きか嫌いかで言えば、好きなのだと思う。
でもその“好き”が恋愛感情としての好きかと聞かれると自信がない。
高校入って俺の中の罪悪感が少しずつ解れてきた頃、もしかしたら朱理は俺のことを好きなのかな?と思う瞬間は何度かあった。
でも中一の時のことを思えば、俺に彼女と付き合う資格などない。
そう思った俺は、直接告白されたわけでは無いのをいいことに、俺の勘違いだと決めつけて、朱理の好意に気づかないフリをしていた。
それが大人になった今回は、直接朱理自身の言葉で伝えられた。
伝えられた以上、ちゃんと朱理の想いに答えを出さなきゃいけないのは分かってはいる。
でもまだ精神的に未熟なままの俺は、思考回路を閉じたまま、現実から逃げ回っているのだ。
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