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そうか。
手紙の返事で“あかりもすき”って書くってことは、俺が先に“好きだ”って書いてたのか。
全てひらがなってことは、小学校低学年の頃のことかな?
すっかり忘れてしまっていたけど、その頃の俺は朱理のことが大好きだったんだな。
翻って、じゃあ今はどうなんだろう。
幼馴染としての好き…は自覚してるけど、それが恋愛感情なのかというと、自信はない。
でも、俺は断ることばかりを考えていたけど、そもそも断らなきゃいけないことなのだろうか。
次の日の夕飯時。
俺はそれを確かめるため、ある作戦を決行すべく、母親に恐る恐る、でも自然体を装いながら切り出した。
「なあ母さん。幼稚園の時遊びに行ったあの遊園地、今年の秋に閉鎖されるんだってさ。
何度か行った記憶があるんだけど、誰と行ったんだったっけ?
従弟の貴司ちゃんだったかな…。
懐かしいな」
「あー、あの遊園地、そうらしいねえ。
あ、でも貴司ちゃんとは行ってないわよ?
あの子まだ産まれてなかったもの。
よく一緒に行ってたのは、朱理ちゃんと祥子ちゃんのご家族だったからしら。
あんた覚えてないの?」
「あー、そうだった。
祥子…ちゃん、いたねー」
祥子のことを今思い出したふりをしたけど、そんなことはない。これからの質問のために忘れてたふりをしただけだ。
「そうだ。祥子ちゃんって、今どうしてるのかな?」
「どう?って?」
「あ、いや…、引っ越した後も同じ県内にいて働いてるんなら、その勤務先に事務用品の営業に行こうかなあ…なんてね。
俺、今月のノルマ、ピンチなんだよね」
「ふーん。どうだか。
てか、あんた知らないの?
祥子ちゃん、大学進学でこの近くに戻ってきてるのよ。隣町の学生街で一人暮らししてるの。
今でも母さん、祥子ママとは仲良しだからね。
“一人暮らししてるんで、何かあったらよろしく”ってね」
「へっ?そ…そうなんだ」
「連絡取りたいんでしょ?祥子ちゃんと。
てか、あんたウソ下手ねえ。そこだけはあの人に似なくて良かったわ」
全てを見透かしてるかのように、母さんはニヤッと笑った。
「へっ、いやー、祥子ちゃんが学生なら俺は用はないよ…」
「ふふっ。早くしないと、朱理ちゃんも愛想尽かすわよ?。
朱理ママからは、“雄くんがどっちの選択をしてもいいよう覚悟はしてる”って…」
「わー!わー!わー!」
俺は母さんの話を慌てて話を遮って、リビングを後にした。
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