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その夜。
知らないIDから、メッセージアプリにメッセージが届いた。
ただ、なんとなくこんなことになるだろうと、予め覚悟はしていたので、俺は躊躇なくそのメッセージを開いた。
「ヘタレくん、久しぶり。
祥子だよ。相変わらずヘタレてるかい?」
予想通り、メッセージの主は祥子だった。
お互いの母親経由でメッセージが届いたってことだ。と、ここまでは想定通り。
まあ、初手からdisられるとは思わなかったけど。
俺は祥子のIDをフレンド登録すすると、メッセージを打つのももどかしく、通話ボタンを押していた。
「小学6年生以来だねえ。
ヘタレの雄平は元気だったかい?」
俺は祥子のことをなんで呼ぼうか、一瞬躊躇。
無難に名字呼びしようと思ったけど、咄嗟に名字が思い出せず、やむを得ず昔のように下の名前で呼ぶことにした。
「祥子…ちゃんも元気そうで」
「“ちゃん”要らない。キモい。“祥子”でいい」
あれ?こんなに祥子は口が悪かったっけ?
朱理は昔から口が悪かったけど、祥子はそんなことはなかった記憶。
「おい雄平、アタシに連絡したいって、なによ。
てか、まあ大体想像つくけどさ」
「祥子、…どこまで知ってる?」
俺は恐る恐る尋ねた。
俺のことを“ヘタレ”と呼ぶくらいだ。おそらく今回のことは、朱理本人から聞いて知ってるだろう。
「んー。全部」
「全部って?」
「アタシがいなくなってからこっち、あんたら二人が中学入ってから二人の間に起こったこと、全部ってこと」
どうやら転校した後も、朱理と祥子はずっと連絡を取り合っていたらしい。
「全部ってことは…」
「もちろん、あんたが3週間放ったらかしにしてることも」
全てお見通しだった。
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