神様がいるのなら

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「朱理はさあ。 雄平が朱理のことを、クラスの男子の言いなりになって避けてた時のことも、全部分かった上で、それでもあんたのことを好きなんだからね。あんたが男連中の中で孤立しないよう、あえて咎めず、それでいてあんたの罪悪感が軽くなるようにって、わざと明るく振る舞ってただけなんだからね。 ヘタレくんは気づいてなかったかもしれないけどさ」 「そう…だったんだ」 「そうだよー。あんた愛されてるねえ。 朱理、あんたと幼稚園の時に交わした約束をずっと信じてるんだよ。 アタシはその約束知らないことになってるけどさ。 だから、他の男の子から告白されても、ずっと断ってるんだ。一人くらいアタシに紹介してくれてもいいのに…って、それは冗談だけど。 あんた、ほんとに愛想尽かされるよ。 今でも大学で言い寄ってくる人いるらしいからさ。他の男に取られても知らないよ。 あんたにとっても、大切な存在なのは間違いないでしょ?そのあんたの大切なもの、奪おうとするドロボーは何処にいるか分かんないよ」 「う…うん」 相槌の歯切れは悪いけど、朱理がずっと抱えていた辛さや俺への優しさを聞かされた俺は、自分の朱理への想いが徐々に輪郭を露わにしてき始めたのを感じていた。 「そうだよ。早くしないと…朱理の身体のこと…、あっ、えーっと。ヤバっ、いや、なんでもない」 「えっ、なに?言いかけて止めるのはやめてよ。朱理の身体が…なんだって?」 俺の反応が前向きになったのに気を許したのか、祥子は、思わず口を滑らせてしまったらしい。黙ってしまったけど、暫くすると観念したのか、ようやく口を開いた。 「アタシから聞いたって絶対内緒だよ? てか、あんたは知らないことにして」 「うん、分かった。約束する」 その後、祥子から聞いた衝撃の事実に、目の前が真っ暗になるような衝撃を感じた。 彼女は実は先天的に心機能が弱く、高校時代の部活中にトラブルのせいで、それ以降負担のかからないように生活を強いられているらしい。 「だから、高二で部活を引退したのか…」 「だと思うよ。心配させたくないからだろうけど、アタシにも大丈夫としか言わないけどね。 だからというわけじゃないけど、あんたにその気があるのなら、朱理を早く安心させてあげて」 「…分かった。今度の土曜、彼女に伝えてくるよ」 「…本当は“明日行け”って言いたいところだけど、あんたも心の準備がいるもんね。 分かった。アタシも朱理には黙っとくから、今夜の電話のことはあんたも黙っといてよ」 お互いそう念を押して、通話を終了した。
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