神様がいるのなら

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それから数日後の土曜日の朝。 『朱理が好きだ』と俺が朱理に伝える日がきた。 俺は心を落ち着かせるために、あえてゆっくり歩いて朱理の家に向かっていた。 小学校の時はよく歩いたこの道。 中学以降に朱理の家に行くことは無くなったので、もう10年ぶりになる。 子供の頃、道沿いにあった商店は何軒か店じまいしていたけど、交差点の目印にしていたカラフルな屋根の家や、時々朱理のお母さんに連れてってもらったミックスジュースの美味しい喫茶店はそのまま残っていた。 そういえば数年前、朱理の家の近くにショッピングセンターができたせいか、この狭い道が抜け道になってるらしく、まだ午前中早い時間帯だというのに、通行量が増えたような気がする。 さっきも救急車が一台俺を追い抜いて行ったけど、すれ違えなくて困っていた様子だった。 ---あの大きなポプラの木のある公園の角を曲がると、朱理の家が見えるはず。 少しばかり緊張しながらその角を曲がると…。 さっき追い越していった救急車が数軒先の軒先に停まっていた。 そして、俺がそれを視認した直後、救急車がサイレンを鳴らして反対方向に動き始めた。 「えっ?朱理の家?」 胸騒ぎがした俺は、走ってその家の前に向かう。 朱理の家は両親と三人暮らしで、お父さんは単身赴任で家にいないはず。 朱理の家の門扉は閉まっていて、中の様子は分からない。ただサイレンを聞きつけて集まった近所人たちが、ヒソヒソ話をしながら朱理の家の方を窺っている。 俺は意を決してそのうちの一人に声をかけてみた。 「ああ、娘さんが運ばれて行ったよ…」 俺はその一言を聞いた途端、目の前が真っ暗になった。 ウソだろ? 心臓の病気って、そんなに悪かったのかよ。 救急車で運ばれるくらいって…。 呆然と突っ立っていると、見かねた野次馬の中の一人が話しかけてきた。 「兄ちゃん、娘さんの知り合いかい? 救急車は隣町の総合病院に行ったよ。 無線で話してるのが聞こえたからね」 「あ、ありがとうございます!」 俺は、そのままその総合病院に向かって走り出していた。
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