舞い込んだ縁談

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「そう硬くならなくて大丈夫だ。見合いだなんて畏まってはいるが、社長と会うのも初めてではないだろう? それに、緋真が嫌なら断っても構わないんだから、気楽にな」 「わかってるけど……」  神花社長とは、会社の祝賀会や社員旅行へ家族として招待された際に、何度かお目にかかったことがある。と言っても私が小さいころの話で、ほとんど記憶はないのだ。  今回の見合いに関しては、神花社長と父の間で“流れ”で決まったというのだから、少し腹立たしい気持ちもあった。こんな大事な話が、どうやったら流れで決まるのか、と。その上、昔から私の気持ちを一番に優先してくれた両親のことだから、今回のお見合いに関してはしっくりきていなかった。  ――本当に、なぜ娘に相談もなく勝手に決めてしまったのだろう。  いずれにせよ、ここまで来てしまった以上は、今更後戻りなどできない。  覚悟を決めて胸に手を当てると、レストランの入口をくぐった。  ホテルの最上階にあるフレンチレストランは、全面ガラス張りになっており、東京の景色が一望できるようになっている。ちなみにここも、神花リゾートが運営しているホテルのひとつだ。  優雅にランチを楽しむ人々を横目に、案内されるがままに進んでいくと、奥の重厚な扉の前まで案内される。スタッフが扉を開くと、そこは広い個室になっており、既に到着していた神花家の視線が私たちに集中した。
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