千臣

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「おはよう、千代。朝から元気やな」 「あっ、瀬良。聞いて聞いて! この郷に、水路を作るんよ!」 「水路?」 急な話に瀬良が驚いているところへ、昨日の千臣の思い付きと、今、水凪が請け負ってくれたことを知らせる。瀬良もこの土地の水の縁の無さを嘆いていたから、とても喜んでくれた。 「そりゃあいい案やん! 水凪様もお迎えできて、水路も引けたら、この郷に怖いものはないんやないか?」 そう言って、あははと笑う。千代もそうやねと笑った。あんなに怖いと思っていた神様のお迎えが、こんなに千代を、郷を、未来に向けて動かしてくれるなんて思ってもみなかった。嬉しい。千代に未来を見せてくれた水凪を尊敬する。やっぱり神様は凄い。瀬良の興奮が千代に伝染し、千代も興奮状態にいた。 畑に向かう道すがら、二人ではしゃいでいると、これから農作業の郷の人たちに次々と声を掛けられる。 「水路を?」 「水凪様が?」 「こりゃ凄い!」 みんなが口々にそう言い、水凪の温情を喜んでくれる。 「水凪様を郷にお迎え出来て良かったなあ!」 「千代が居ってくれたからや」 千代はそう言われて、生まれて初めて、自分の背負った運命によって、人の為に何か出来たのだと実感した。千代は水凪に感謝せずにはいられなかった。 (水凪様、ありがとうございます……) 祈りに載せて、水凪に届ける。神社に向かった村人たちが次々に水凪に感謝をしているのを見て、千代は湧き上がる喜びに胸を震わせた。
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