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神の仕事
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千代は、郷の為に水路の提案をしてくれた千臣をかいがいしく世話した。千臣も若いこともあって傷の治り方も順調で、今日は千代に持ってこさせた木の枝を使って杖づくりをしていた。器用なもので、刀で枝を割り、紐で部材を括り付ける手さばきが慣れている。きっと旅の途中で何度も作って来たのだろうなと思わせた。
「器用ですね。やはり旅の途中に磨かれた腕ですか?」
「そうだな、何でも必要になるからな」
そう言いながら、手の触れる部分を小刀で丁寧に磨いている。よく使いこまれたものだ。その柄の部分に千代の目が留まった。龍の模様が彫られていたのだ。
「凄く細かい模様ですね。これも千臣さんが彫られたのですか?」
千代が小刀の柄を見ていることに気付いた千臣が、それは都で買ったものだ、と言った。
「都で! 都では皆さんどんな暮らしをしてはるんですか? ここは街道からも外れとるし、山にも囲まれとって、都のことを知ることが出来へんのです」
目を輝かせて千臣に話を請うと、千臣は笑って都の話をしてくれた。自分で田畑を耕さなくても衣食が賄えること。荷ではなく人が乗る牛車があること。折々の祭りが多くの見物客を前に盛大に行われることなど。
千臣の話もどれもこれもが、千代にとって未知の世界だった。それで? それで? と次を促す千代に、千臣は苦笑した。
「話を聞いたら都に行きたくなるんじゃないか?」
くすくすと笑う千臣に、千代は笑って言った。
「私には、この地で巫女としての務めがありますので」
千代が巫女になることを喜んでくれた村人たちの為にも、良い巫女になりたい。だから、この村を出ようとは思わない。そう言うと、千臣が、千代はいい子だな、と千代の頭を撫でた。……大きくて厚みがあって、あたたかい手のひらに驚いてしまう。祖母の手は勿論、瀬良の手もやせていてとてもこんな厚みはない。どんな村人とも違う男性の手の感触を、千代は初めて知った。
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