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「おとうさん。助けてくれて、ありがとうございました」
その言葉を聞いた瞬間、明生はタガが外れたように涙を零した。
健一は、自分の犯した罪が少しだけ報われた気がした。
「達者でな」
明生は風香の頭を優しく撫でると、健一の方を見る。
「兄貴も」
健一も明生に告げる。
二人の目が合った。
明生は笑った。
健一は、目を細めて、明生に笑い返した。
二人の間に言葉はいらなかった。
明生は背を向けると、振り返ることなく、去って行った。
健一は、その背中が見えなくなるまで、見送っていた……。
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