ヒットマンの旅愁

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 鉄道駅近くの路地。  その場所に、一軒のラーメン屋があった。  カウンター席とテーブル席が4つだけの小さなラーメン屋だ。  一人の男性が店先に居た。  身長165cm程。  中年らしく腹が出ており、やや猫背気味だが姿勢が悪い訳ではない。  顔には豊齢線が入り目つきが悪く、どこか気難しそうな印象を受ける。  服装は黒い割烹着姿に、頭にタオルを巻いていた。  店主の吉村健一(よしむらけんいち)であった。  健一は、暖簾の間から外の様子を眺める。  空を見上げると雲行きが怪しくなっていた。 「嫌な空だね」  店内に戻ると、ラーメンを出す準備を進める。  終わったところで、健一はカウンター向こうの店内を見るが、客はまだ来ていないようだ。  健一は自分の仕事場である厨房ではなく客席側に座った。  特にやることもないのでテレビをつけることにした。  丁度ニュースをやっていたので、それを観ることにした。  どうやら何か大きな事件があったらしい。  その事件について報道していた。  内容は殺人事件だった。  被害者の名前は辻井克幸(つじいかつゆき)。  死因は絞殺による窒息死。  現場となったのは15階建て最上階のマンションの一室。犯人らしき人物は見つからず、警察は引き続き捜査を行う予定だという。  ニュースキャスターは淡々と原稿を読み進めていく。  続いて次の話題へと移った。  次に報道されたのは、最近頻発している通り魔事件の続報だった。  またも若い女性ばかりを狙った犯行であり、被害にあった女性は軽傷ではあるものの入院しているという。警察は同一犯の仕業とみているが、未だ有力な手がかりはなく逮捕には至っていないとのことだ。  唐突にテロップが表示された。 「緊急速報です。先ほど放送した連続通り魔事件の容疑者と思われる人物が、本日正午頃に逮捕された模様です。
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