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基本的にはM59の第3世代型であるが、グリップが握りやすいワンピースグリップとなるなど、従来のモデルと比べると全体的にスタイリッシュなデザインとなった拳銃だ。
明生はS&W M5906を両手でホールドする。
海外で拳銃射撃術を学び、数々の実戦を経験した明生は、その動きに無駄がなかった。
明生は、男が健一に気を取られている隙に、男の右肘に狙いを定めた。
引き金を引く。
乾いた音が鳴り響いた。
男の手から包丁が落ちた。
そして、明生は言う
「テメエ。よくも子供に手を出しやがったな」
明生は、男を睨みつけた。男の胸ぐらを掴むと店内まで引きずり出し、男の顔に拳を叩き込んだ。
男は動かなくなった。
明生は健一と風香の側に来る。仰向けに倒れた健一の側に座ると、腹部の刺し傷を確かめる。
健一は、自分の命よりも大切な娘を守れたことに安堵していた。
「傷は浅い、ビールっ腹で良かったな。内蔵までいっていない」
その言葉に風香がいち早く反応する。
「本当ですか!」
明生は風香に笑顔を見せて、安心するように言う。明生が拳銃を持っていることなど気にしない。父親が助かるという事実だけが、風香にとって大切なことだった。
「タオルを。それと救急車と警察を呼ぶんだ」
明生が風香に言うと、近くにあったタオルを手渡し、奥にある電話機に向かって走った。頭と腹の傷口にタオルを押し当て止血する。
「風香。大きくなったな。よく育ててくれたな、健一」
明生は健一の肩に手を回し、健一の耳元で囁く。
「俺は、兄貴から逃げたんだ。本当の親でもないのに」
健一はボロボロと泣く。
「だと思ったよ。ここ数日、健一と風香のことを見ていたが、本当の親子だと思った。それが、また悔しくてよ」
明生は健一の頭を抱き寄せた。
健一は、そのまま明生の胸に顔をうずめる。
ことの起こりは、明生が組の命令でヒットマンとして殺人を犯す時に遡る。
一人娘の風香を残してヒットマンとしての役割を行えない明生は、健一夫婦に風香と金を預けてヒットマンとしての役割を果たす。
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