一・春をほととぐ

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そして、翌日、姫君たちは後宮入りします。 姫君の侍女を残して馬車と下女たちは帰って行くのでありました。 後宮内では、女官教育を受けた女房たちが各姫君に配属されていきました。 この時期は、各領の姫君が宮使い(妃候補)として登殿することになったのでありました。 東領の華蛍(10)には、新しい名『涼木ノ方』すすきのかたさま、、、 桜を模した、、桜花殿を与えられたのである。 西領の筆蛍(10)には、新しい名『笹葉ノ方』ささはのかたさま、、、 笹の葉を模した、、緑花殿を与えられたのである。 北領の雪蛍(11)には、新しい名『星屑ノ方』ほしくずのかたさま、、、 紅葉を模した、、紅花殿を与えられたのである。 、、、、 そして、朝早くから桜花殿では、、、 涼木ノ方様の侍女、梅乃が女房たちに命じて寝所の御簾を上げさせるのでありました。 「姫さま、起きてください、、」 華蛍は、眼を擦りながら、「なぁに、ウメノ、、」 「なぁにじゃありません、朝ですよ、起きてください、姫さま、、」 「うぅ、、もう朝なの?」 華蛍は、顔を洗って、女房たちに自慢の黒髪に櫛を入れてくれる。 後宮入りの教育は、一ノ姫、蓮蛍が受けていましたが、、、、 蓮蛍が妃候補としていたのですが、、後宮入り一月前から流行病に侵されていました。 仕方なく、東領家からは、三ノ姫(華蛍)を選んだのでありました。 東領家には、二ノ姫(杏姫)は、四年前に原因不明の病で亡くなっています。 そんな訳で、、東領家の姫君は、一ノ姫(蓮蛍)と三ノ姫(華蛍)しか居ないことになる。 三ノ姫(華蛍)は、いやいやながらも父上様の命令には逆らえないでいました。 なので、、宮廷内の式たり作法などは皆無でありました。
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