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Day 01 2030年12月25日
世間一般的にはクリスマスと呼ばれる日。
その日は何事もなく1日が終わろうとしていた。
しかし、あの異形のラットを見てから僕の胸には引っかかるモノを覚えていた。もしも、屋久島勇人が生物兵器を使って何かの実験を行っていたとしたら、本当にコンプライアンス違反になってしまう。
何となく、僕は屋久島勇人のラボへと向かう。
そこには、僕より背の高い男性がいた。彼こそが屋久島勇人である。
「厳島君、僕に何の用だ?」
「先輩、少し気になることがありまして。もしかして、そのラットを使って何か実験をしていませんか?」
「いや、別に」
「そうか。だったらいいんだけど」
「それより厳島君。昨日、僕のラボに入ったようだな。監視カメラの映像に君の姿が映っていた」
「確かに、入りました」
「僕の不始末でカードリーダーにカードを挿したままだったから悪いけど、何か物に触れた形跡はないよな」
「特に・・・無いです」
「そうか。ならばいいのだが」
そして、僕は自分のラボへと踵を返した。
しかし、胸の引っかかりは取れなかった。
「トシくん、屋久島さんのラボへと向かったんですね」
「ああ。しかし特に怪しげな様子はなかったよ」
「やっぱり、気にしているんですか?生物兵器のこと」
「そりゃ、気になるよ。確かに僕がこの中林薬品へと入社したのは第三次世界大戦が終わった後だが、生物兵器の噂が本当ならばこの会社はヤバい。端的に言えば人ならざるモノを開発していたことになる」
「いくら何でもそれは大袈裟よ。確かにあの戦争で失ったモノは多いけど、得たモノも多かったはず。それに日本は一応戦争に巻き込まれただけで、戦勝国でも敗戦国でもない。その証拠に大量の軍需を得たのは言うまでもないじゃん」
「そうだな。確かにあの戦争はアメリカ軍と韓国軍への軍需が多かったと聞く。僕は当時神港大学に通う大学生だったが、友人が大学を中退して川崎重工業の航空系のシステムエンジニアをやっていたからな。特にアメリカ軍からの要望は多かったらしい」
「なるほどねぇ」
「まあ、お陰で国の借金はペイできたからいいんだけど。おっと話が逸れた。とにかく、僕は中林薬品の生物兵器を追っていくよ」
「何だか厭な予感がするけど、気をつけてね」
「ああ。とっても厭な予感がしているよ」
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