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本当は忠成を自室に呼んで、先日の告白の答えとか……色々聞きたい事はあるんだけど……。俺自身白黒付けるのが怖くて、何となく伸ばし伸ばしになっている。
「……?」
と、自宅前に見慣れた人影を発見して、俺は思わず立ち止まった。
「……結衣ちゃん?」
その声に、ボブカットの人影がこちらを向く。
俺ん家の壁にもたれて所在なげに佇んでいたのは、忠成の4つ下の妹。俺たちが高2だから、彼女は今中1か。
自分の家のほうは西日が射していて、俺の家のほうは日陰だったから、日差しを避ける形で兄を待っていたんだろうか。
(ま、日向は暑いしな)
そんなことを思いながら、
「忠成ならまだ部活……」
そう言おうとしたら、
「あの……あのね、あたし……アキ兄が帰ってくるの、待ってたの」
遮るように、そう言われた。
(俺を……待ってた?)
眼鏡と、長い前髪の下に隠された俺の表情を窺うように、結衣ちゃんがこちらをじっと見つめてくる。
(なんか……嫌な予感……)
俺の前に立ち尽くしたまま。
何かを言おうとして、自分を鼓舞するように胸前でぎゅっと握られた彼女の華奢な手を見て、俺はそんな風に思った。
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