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「俺、ばあちゃんには負けるけど、忠成には勝ってる」
老婆は負けん気の強そうなその子を、にっこり笑って見つめると、
「アキくんは賢いもんね。だから、っていうのも変だけど……たーくんのこと、末永くお願いね。たーくんは猫チュウのことしっかり面倒見てやってちょうだいねぇ」
刹那寂しげな笑みを浮かべてそう言った。
その言葉に、突き放されたように感じた幼子たちが息を飲んで彼女を見遣った。その視線の先で、老婆はいつものように何事もなげなのほほんとした顔で庭を見つめていた。
あれは何年前の光景だったろう。
向かい家の庭から迫り出した椿が、路上へポタリと花を落とした気配に、ふと立ち止まって思考をめぐらせる。
ニャーン。
いつの間にやってきたのか、足元にまとわりついてきた牛柄の猫を片手で抱き上げると、
「チュウ、お前、また痩せたんじゃないか?」
もう一方の手に学生鞄を持ったまま問いかける。
その声に、齢19歳を越えた老猫が目を細めて喉を鳴らした。
体重もさることながら、昔は黒い斑模様の中に、こんなに白い毛は混じっていなかったように思う。
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