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「お前も年取ったな……」
何気なくそう言ってから、ちょっぴり悲しい気持ちになる。
「婆ちゃんが死んで何年だっけ」
あのときの忠成は見ていられなかった。
俺だって悲しくて堪らなかったのだ。お婆ちゃんっ子だった忠成を思うと、今でも胸が張り裂けそうになる。
婆ちゃん――正確に言えば忠成の祖母――は彼の幼馴染である俺にも本当の婆ちゃん以上に大切な存在だった。
俺の本当の祖父母は、父方、母方ともに早くに亡くなっていて記憶にない。だから俺にとって実質的な祖母は忠成の婆ちゃんだと考えた方がしっくりくるのだ。
それは、婆ちゃんがよその子・うちの子という風に、わけ隔てることなく俺たちに接してくれたからだろう。
いつだったか婆ちゃんが、俺が居ないと思って忠成にこう言っているのを聞いたことがある。
『たーくん、アキくんを大切にせんにゃーいけんよ? アキくん、無口で取っ付きにくいトコもあるけど、たーくんの生まれて初めてのお友達じゃけぇね』
それをたまたま小耳に挟んだとき、俺は鼻の奥がじぃーんと熱くなるのを感じた。
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