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忠成にとって俺が初めての友達であるように、俺にとっても忠成は一番最初に出来た友人だ。
だから、俺も忠成を大切にしなくちゃ。
そう思ったのを、今でもあの熱とともに鮮やかに思い出す。
あれから数ヶ月。
向かい家の、吉本家の庭で咲き誇っていた遅咲きの椿も、その枝先に種を結び始めていた。
それに代わって、今度は合歓の木が、薄紅色の花火みたいにふんわりとした花を咲かせて庭を彩っている。
ちょうどその頃――。
婆ちゃんの忘れ形見だったチュウが死んだ。
目を射るような日差しと、道路に転がったセミの亡骸がやけに脳裏にこびりつく日だった。
今を盛りと綿毛風の花をつけた合歓の木の、その根元にひっそりと隠れるようにして息絶えていたチュウ。
老齢のチュウに、今年の猛暑は耐えられなかったのだろう。
忠成が、婆ちゃんの死後、心の拠り所のようにして可愛がっていた猫だ。
そいつが死んだのに、幼馴染みは涙ひとつこぼさなかった。
それが、俺には物凄く気懸かりだった――。
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