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普通、異性に対して抱くであろう感情を、最近何故か忠成に対して感じてしまう自分に俺は戸惑いを覚えていた。
中学に入ってから、俺はぐんぐん背が伸びた。
それまでは大差なかった忠成との身長差が、ここ1年で15センチ以上開いてしまった。
それで、今までは対等に正面から俺を見ていた忠成の視線が、自然上を仰ぎ見るような格好になったのだ。
俺ばかり背が伸びることを不満に思っているらしく、時折挑むような目つきで俺を睨みつけてくる忠成。
その表情が、はからずも俺の庇護欲をくすぐり、困っている。
忠成に上目遣いで見上げられるたびに、俺は自分の心臓がどうにかなってしまいそうで焦った。
最初は何でそうなるのか理解出来なかったけれど、俺は馬鹿じゃない。すぐに、その感情が恋心だと気が付いた。
正直、自分で自分が信じられなかった。
何で俺が、同性の――しかも幼馴染み――相手にそんな気持ちになるんだ!?
言っとくが、俺はノーマルだ。
断じて同性愛者じゃねぇ。
現に初恋は、小学1年のころ担任だった若い女教師だったし。
聡明な彼女の雰囲気を思い出すと、今でも綺麗だったなぁ、と思える。
他の大人たちみたいに俺をやたらと子供扱いしないところが特に好きだった。
だから、だ。
まさか同性相手にこんな気持ちになるだなんて、我がことながら青天の霹靂で。
本音を言うと自分の気持ちが整理しきれていないというのが正しい。
この気持ちが気の迷いならそれでいい。早いところ正気に戻ってくれと願うだけだ。
そんなわけで、俺は自分を落ち着かせるため、なるべくなら忠成と距離を置きたいと思っていた。
夏休みに入ればしめたもの、のはずだった。
中学に入ってからテニス部に入部した忠成は、日中部活に追われて過ごす。
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