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その間、無所属同然の生活をしている――実際には文芸部に形だけ籍がある――俺はフリーだ。
のんびりとテレビを見たり読書をしたりして過ごせる。最近は夜眠れないせいもあって、昼寝をすることが多くなったけれど、概ね落ち着いて過ごせている。
向かい家に住んでいるため、中学に入るまでの俺たちは本当に引っ付きもっ付きだった。
学校への登下校はもちろん、帰ってからもどちらかの家に入り浸る生活が当たり前になっていた。
一人っ子の俺にしてみれば赤ん坊のころからずっと一緒の忠成は隣に居て当然の存在だ。
彼に妹が出来る7歳まで、2人の間に割って入る者が出てくるなんて思いもよらなかった。
7つも歳の離れた俺たちを、「お兄ちゃん、お兄ちゃん」と呼びながら付き歩く幼子が、決して憎かったわけではない。
でも、 鬱陶しい存在だと感じてしまったのもまた事実だった。
思えば、あれにしたって嫉妬だったんだろう。
いくら仲が良いとは言え、俺と忠成は他人だ。
血の繋がった妹には勝てっこない。
そんな俺の、つんけんした空気を感じ取ってか、少し大きくなってからの彼女は俺たちに付きまとわなくなった。
「最近結衣がお前を意識してる気がする」
一人何にも分かっていない鈍感な忠成が、ふと漏らした一言に俺は愕然としたものだ。
忠成は結衣ちゃんが俺に懸想しているのでは?と思ったらしい。でも実際は違うはずだ。
恐らくは俺が発する「邪魔だ」というオーラが伝わっていただけなんだ。
考えてみれば俺も大人気ない。
小さいころから子ども扱いされることに物凄い嫌悪感を覚えていたはずなのに、実際の俺なんてその程度の小さな男だったんだ。
そう気付いてからは、極力彼女に優しくするよう心がけた。
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