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それが、忠成の目にどう映ったのかなんてややこしくなりそうなので考えないようにした。
「秋連ってさ、本当整った顔してるよな。無茶苦茶うらやましいぜ」
何の前触れもなく俺の顔をまじまじと見つめながら告げられた忠成の言葉に、俺は酷くドキッとさせられたことがある。
中学に上がって間もないころの話だ。
「女子たちが騒いでるの、聞いたんだ。天一神君はハンサムだ、って」
そのときは、後から告げられた一言に反応したのかと思ったけれど、今思えばきっと忠成が俺の顔を形容した「整った顔してるよな」というくだりにグッときたんだ。
それは、忠成自身が俺に対して抱いているイメージに他ないから。
結局女子が騒ごうが騒ぐまいが、関係なかったのだ。
俺は忠成にどう思われているか、が気になっていた。
そんな風にとりとめもないことを考えていると、この恋愛感情は揺らぎないものなんじゃないかと思えてくるからまずい。
「ヤバ……」
気持ちを落ち着かせようと机に向かったはずなのに、これじゃ逆だ。
ふと壁の時計に目をやると、21時を回ったところだった。
大抵このぐらいの時間に、忠成はやってくる。
今、忠成に入ってこられたら本気で困る。
俺はどんな顔をして友の顔を見れば良いのだろう。
「はぁ……」
この部屋に入ってから2度目の溜め息をついたと同時に、階下から階段を駆け上がってくる足音が聞こえてきた。
「マジで勘弁してくれよ」
頭が痛い。
この軽快なステップが、忠成以外のものであるはずがない。
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