警鐘

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警鐘

「よぉっ♪」  心の準備も済まないうちに、扉が開かれる。  無論、ノックなんてするような殊勝なたまではない。  声と同時に何の前触れもなく開かれたドアに、俺は背を向けたまま深呼吸をした。  俺の様子なんてお構いなしに部屋へと踏み込んで来た忠成(ただなり)を、精一杯の仏頂面で振り返る。 「あ~。やっぱここサイコー♪ すっげぇ涼しぃー♪」  途端、マイ枕片手に、うっとりと目を細めた忠成の笑顔が目に入って、俺は軽い眩暈(めまい)を覚えた。 (ヤベッ。今の顔むっちゃ可愛い……)  そう思ったのを隠そうとしたら、声が自然と不機嫌になった。 「今夜もかよ……」  本当は毎夜のように忠成が訪ねて来ることが、嬉しかったりする。  別の部分では困っている自分もいるけれど、基本俺はこいつの顔を見るのが好きなのだ。 「だって俺ん()、クーラーねぇんだもん」  言葉とは裏腹に、全く悪びれた様子もなく歩み寄ると、我が物顔でベッドに腰掛ける忠成。  忠成は、俺の家を訪れる際、必ず枕を持ってくる。  この枕、頭の下に敷くために持っているわけではないことに、ここ数日で気が付いた。  そのことが、俺の胸を締め付ける。 「俺の部屋は避暑地じゃないぞ……」  言葉と表情は思いっきりぶっきら棒になっているけれど、そんな忠成を追い返す気なんてさらさらない。
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