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元気に振舞っているけれど、俺には忠成のSOSが感じ取れる。
そんなことには気付かないふりをして彼とは距離を置けと警告を発する自分と、そんなん出来っこないだろ、と否定する気持ちとが葛藤する。で、結局は後者が勝るのだ。
我ながら甘いな、と思ったら溜め息が出た。
「そんなに迷惑?」
その溜め息に不安を感じたんだろう。
頼りない表情を浮かべた忠成が、ベッドに座ったまま俺のほうを見つめてきた。
俺も椅子に腰掛けているから思いっきり上目遣いをされたわけじゃないけれど、やっぱりこの目にはやられる。
途端、心臓がドクンッと跳ね上がったのが分かった。
「……いや、迷惑じゃねぇけど」
思わず視線をそらしてそう告げると
「じゃぁベッドが狭くなるから?」
常々「シングルベッドに二人はきつい」と俺がこぼしているのを覚えていたんだろう。
申し訳なさを含ませた小声で忠成が言う。
「俺、下で寝てもいいよ?」
続けて床で寝ると言い出した忠成に、俺はちょっと焦った。
華奢な忠成に、そんなことはさせられない。
実際は子犬のように元気一杯の男なんだけど。
頭では分かっていても、彼の細い首筋や、四肢を見ているとどうしても護らなくては、と思ってしまうのだ。
「却下だ。んな必要はねぇ……」
ああ、分かってる。完全に俺の負けだ。
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