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忠成に気付かれないように心の中で舌打ちすると、俺は勉強机に向き直った。
「まだ寝ないの?」
21時過ぎから寝ようとしていることのほうが、俺には驚きだ。
その面差しや立ち居振る舞いにまだまだ子供っぽさを残した幼馴染みは、中身も見たままお子様なのだ。
「もう少し勉強する。気にしなくていいから先に寝てろ」
本当は、忠成の傍に寄るのが怖いだけだ。
でも、この幼い友人にそんな下心なんて分かりゃしないだろう。
忠成に背を向けていることで、俺は躊躇いなく苦笑の表情を浮かべられた。
「秋連、頭いいのに本当頑張るよな。俺なんかまだ課題帳開いてもないのに」
そりゃあ、毎日部活に追われていれば無理もないだろう。その上寝るのがこんなに早いのだ。
(この調子じゃ、今年もきっと夏休みが残り数日になったころ泣き付いてくるな)
毎年恒例の行事を思い出して、俺の顔は自然ほころんだ。
小学生のころ、馬鹿正直に俺のやったものを正確に写した忠成は、ズルがバレて担任にこっぴどく叱られた。
忠成が、夏休み帳を全問正解するなんて、誰の目にもおかしく見えたからだ。
当然見せたのが俺だというのもすぐに分かって、とばっちりを食らったのを覚えている。
それからは、適当に間違いを含ませて写すことを覚えた忠成。
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