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その労力を、別の部分に使ったらもっと伸びるはずなんだけどな。
そこまで考えて、しかし、忠成が自分で何もかもできるようになったなら、それはそれで寂しいような気もすると思い直してしまう。
自分は忠成を守れる男に成長したいと願う一方で、当の幼馴染みには変わって欲しくないと望む自分勝手な感情に気付いて、俺はまたもや自己嫌悪に陥った。
「秋連……?」
相槌すら打たない俺を不審に思ったのだろう。忠成が恐る恐る声をかけてきた。
「……あ、ああ……すまん。ちょい考え事してた」
今振り向くのはまずい。
背を向けたまま応じると、
「今年も多分お願いすることになると思うんだけど……」
躊躇いがちに問う声がした。
「ああ。こっちもそのつもりだから安心しろ」
俺がそう返すと、背後から安堵したような吐息が聞こえてくる。
「ね、俺、本当に先に寝ちゃってもいいの?」
安心したら睡魔が襲ってきたんだろう。
その声が、眠気を多分に含んでいることを感じ取った俺は、それでも俺を気遣う忠成に、思わず嬉しくなってしまう。
(やっぱり忠成は可愛い)
ヤバイ感情だと思いはするけれど、俺は今はっきりとそう、自覚した。
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