枕になんて

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 もしこれが原因で忠成(ただなり)が寄り付かなくなったとしても、それはそれで仕方ないことだ。  俺は、忠成に嫌われる以上に、彼が無理していると知っていて気付かない振りをし続けるほうが嫌だった。  忠成は勉強に関して言えばできるほうじゃない。でも、人の気持ちを察することにかけては長けている。そればかりか、周りの気持ちを考えすぎて自分が損をするタイプだとも思う。俺みたいに自己中心的な人間とは違い、他者を思い遣ることができる奴だ。  それが、一人っ子の俺と、(きょうだい)がいる彼との最大の違いなんじゃないだろうか。  そんな忠成が相手なのだ。  きっと、俺の気持ちだって汲んでくれるはず。  これはある種の賭けだ。  忠成の性格を知っているからこそ、絶対に負ける気がしないズルイ賭け。  この期に及んで、そういうことを考えてしまう辺り、自分は物凄く打算的で嫌らしい奴だな、と思う。 「……どう、いう……意味?」  薄らぼんやりとした明かりの中、忠成(ただなり)が不安そうに俺を見つめる。  ベッドに座り込んだ忠成と、その傍に片膝を付いて、ほんの少し彼を見下ろす格好になっている俺。  また、だ。  上目遣いで見上げる忠成のその表情に、俺はそんな場合じゃない、と分かっていながらドキドキしてしまう。  場違いに騒ぐ心臓を落ち着けようとしたら、自然、手に力が入った。  立てた膝の上に載せた拳を力強く握り締める俺に、気付いているのか居ないのか。  忠成が、不安そうな顔をして俺を見つめている。  その視線にとうとう耐え切れなくなって、俺は彼から目を逸らした。 「秋連(あきつら)?」  俺が忠成を追い詰めていたはずなのに、いつの間にか立場が逆転してないか?  そう思う焦りからか、背筋を冷たい汗が伝った。
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