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いや、確かにニョロ豆に鼻を押し付けて嗅げば彼の発する体臭は感じ取れるけれど、それだってどちらかといえば「良いにおい」として認識されてしまうのだ。
彼女の言うように「獣臭い」においだと認識されることは皆無で。
俺がニョロのニオイを嗅ぐときは、臭いかどうかを確認するためではなく、そこにニョロがいることを感じたいからに他ならない。
それで、なのかも知れない。
衣服についたぐらいの微かな(?)ニョロのニオイでは、俺の鼻は察知してくれなくなっていた。
己の嗅覚が感じ取れないニオイの有無を判別することは、正直至難の業だ。
彼女に振られて、長いこと失意のどん底に落ち込んだ俺だったけれど、その間、何だかんだと理由をつけては俺の様子を見に来てくれた、向かい家の幼馴染み――秋連――に、事の顛末を全てぶちまけてみることにした。
思慮深い秋連なら、この先俺がどうしたらいいか、的確に導いてくれそうな気がしたからだ。
このまま青春真っ盛りの高校時代を、色恋沙汰無しで過ごす羽目になるのは何としても避けたかった。
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