幼なじみの秋連

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幼なじみの秋連

 勝手知ったる他人の家。  小さい頃から入り浸ってきた秋連(あきつら)の部屋で、俺は幼なじみに一部始終を打ち明けた。  薄っすらと夕焼けに染まる室内で、薄暗くなってきたことにも頓着しないで、俺たちは対峙(たいじ)していた。  学習机に背を向ける格好で、椅子に胡坐(あぐら)をかいた俺を、ベッドに座った秋連がジッと見つめている。  動きやすいように髪を若干短めにカットしている俺と違って、文科系の秋連はホストよろしくうっとうしげに前髪を垂らしている。  その髪をかき上げながら溜め息を吐くと、秋連はファッションとして掛けている(らしい)伊達眼鏡を外して足を組み直した。  スポーツ量は断然俺の方がこなしているはずなのに、どうしてこいつの方が体格がいいんだろう。  スッと通った鼻梁(びりょう)に、切れ長の目。いつも伊達眼鏡と前髪に隠れていて分かり辛いけれど、秋連はかなり整った顔をしている。  頭だって俺なんかよりずっと良いし――比べるのもおこがましいくらいだ――、だからと言ってそれを鼻に掛けたりしないところが同性の俺から見ても好感が持てる。  きっと、女の子にも相当人気があるだろうに、何故か浮いた話が出ないのが不思議だった。  まさか、勉強の方が楽しくて恋愛に興味が湧かない、というわけでもなかろうに。  彼の長い足を見ながらぼんやりとそんなことを思う俺をよそに、秋連はずっと黙したままだ。 「……忠成(ただなり)、ちょっと、手ぇ、貸せ」  しばし後、思案気にうつむいていた秋連(あきつら)が、そう言って手を差し伸べてきた。 「ん? あ、あぁ……」  急に破られた沈黙に戸惑いつつ、彼の手に片腕を預けると、秋連は俺の服の袖口に鼻を寄せた。
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