幼なじみの秋連

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「……やっぱ臭い?」  五月の上旬。  まだ本格的に汗をかくようなシーズンではないけれど、秋連のその仕草に、一瞬風呂入ったっけ?とか思ってしまう。  いや、今はそれよりもフェレ臭のほうが問題か。  そう思い直して恐る恐る問いかけると、 「自分ではどう思うんだ?」  逆に問いかけられた。  秋連の視線に促されるよう、自分の袖口を嗅いでみると、洗剤のニオイにまぎれて微かに俺自身の体臭が感じられた。 「洗剤と、俺のニオイがする」  正直に感じたままを口にすると、 「お前の鼻は本当にニョロのニオイだけ除外して嗅ぎ分けるみたいだな。俺には洗剤の香りを押し退けてあいつのにおいが迫ってきたぞ」  苦笑交じりにそう返された。  やっぱり……。  愛フェレの名前をサラリと交えて告げられた言葉に、俺は正直ショックを受けた。  分かっていたけれど、明確に言葉にして告げられると、痛いな、と思った。 「どうしよう? やっぱ俺の鼻、当てになんねぇってことだよな?」 「そういうことになるな」  こういうところ、秋連(あきつら)はにべもない。  脇へ避けていた眼鏡を手にして(もてあそ)びながら、口の端に微笑を浮かべて即答する。  そのセリフにうなだれる俺に、 「嫌ならニョロを誰かにやるとかすりゃ手っ取り早いんじゃない?」 「それだけは絶対嫌だ! んなことするぐらいなら恋人なんて要らねぇ!」 「……当然だな」  どうやら俺を試したらしい。  先程より口の端に湛えた笑みを濃くして、秋連がつぶやく。 「分かってんなら言うなよ……っ」  その態度に、ちょっとムッとして吐き捨てると、 「俺の鼻で良けりゃ貸してやるけど? どうする?」  願ったり叶ったりの提案が成された。 「――ただし」  この付け加えさえなければ――。
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