中秋の明月

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中秋の明月

 今年、つまり2013年の中秋の明月は、いつもより真ん丸らしい。この真ん丸が今度見られるのは、8年後くらい後になるらしい。そんなにありがたい真ん丸ならばもっと目をこらして見た方がいいかと思ったが、あいにく俺は目が悪い。真ん丸の月は見えるが、その左右にも重なって月が見える。つまり月が三つ重なって見える。メガネは二つ持っているが、どちらも大した違いはない。 「メガネ、こんなことで買い換えるのもな」  二つのメガネを両手に持って、ぶらぶらと揺らしてみる。昔は視力に自信があった。今は視力が悪いことに関しては絶対的な自信がある。全くもって自慢にならない。メガネもコンタクトも値段が張るし、結構なハンディだなとしみじみ思う。子どもの頃の視力のままなら、何も道具はいらないのにと残念に感じる。  俺は特に天体観測の趣味は持っていない。今、中秋の明月を見上げているのも、単なる偶然だ。テレビでニュースを見ていたら、中秋の明月が毎年必ずしも満月ではないということを言っていたので、意外と珍しいものなのかと空を仰いでみただけだった。
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