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のんちゃんがてっちゃんの家を出た後――。
「はぁーっ、のんちゃんの女装可愛かったねぇ」
「山田も大概かわいいけどな」
「おう」
「のんちゃんのあとに言われてもねぇ? お世辞なのが見え見えなんだよ君達! まぁ……鏡見て自分でもわりと可愛いなとは思ったけど」
それにしても、普段はまるっきり男にしか見えないのに、ちょっと髪を付け足して化粧をしただけでこんなに変わるなんて驚きだ。
そりゃあ女の子は化粧をするよねぇ。(最近は男子もメイクをするのは珍しくないけど、ぼくの文化ではない)
「のんさんと比べなくっても、すずはそのままで可愛い……」
「え? やだなぁちーちゃん、真顔で褒めないでよ! それじゃ、このカッコのままのぼくとデートできる?」
ちーちゃんの背中を軽く叩きながらそう言うと、ちーちゃんは少し顔を赤らめた。あ……あれ?
「どうせ暇だし、デートというか……遊びには、行きたい」
「う、うん。それにぼく今日は元々普通にちーちゃん誘うつもりだったんだ、のんちゃんはデートでいないし……」
ぼくまで女装させられたのは想定外だったけど。
でもちーちゃん、こんな格好の僕と一緒に歩くのは本当にイヤじゃないのかな……?
すると、てっちゃんがわくわくとした表情で言った。
「なーなー、これからこっそりのんちんのあと着けて駅までいかね? 朝比奈先輩の私服、見てみたくねぇ!? マジケ〇シロウだったらどうしよう!! すずちんとハルちんはそのあと遊びに行きゃいいしさっ」
確かにちょっと見てみたいかも……。
もしかして私服、すっごいダサイかもしれないし!!
ああっ、普段お世話になってる先輩で親友の彼氏なのに、想像したら笑っちゃう~!! ぼくってイケナイ子だなぁ!!
「いいな~東雲、そのカッコの山田とデートとかご褒美じゃん! 俺も付いて行きたいけどさぁ、野暮だよなぁ」
「健人にしてはよくわかってるじゃん。ぜってぇ付いてくなよ?」
「分かってるってぇ」
ぼくは別にみんなと一緒に遊んでも構わなかったけど、男三人に女一人の構図じゃちょっと違和感があるというか……男らしく振る舞いすぎて、男だとバレてしまうのが恐かったから、ぼくは何も言わないでおいた。
ちーちゃんも何も言わなかった。
(※彼らが希を尾行した様子は、今後千春視点の談で語られます)
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