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第一話 その男、凶暴につき
――どうしてオレは、どこに行ってもどんな格好をしていてもこんな目に遭うんだ?
「オイオイ、何で校内に女がいんだよ?」
「は? ここ男子校だぞ。寮に女がいるはずねぇじゃん。あ、誰かの妹? いや、家族も立ち入り禁止だしな」
「じゃあコイツ男!? マジか、全然見えねぇ~」
ごく普通の格好をして――何の変哲もない白いTシャツに、ジャージ素材のハーフパンツ――居てもいい場所に居るだけなのに。
「ていうか髪派手すぎじゃね? 高校デビューってやつ?」
「ピンクとかなかなか攻めてんな。つーかマジで、顔すげーカワイイなおい」
「腰とか超細ぇし、やっぱこないだまで中坊だった奴は俺たちコーコーセーとは違うな~」
たしかに髪の色は少し派手かもしれない。けど、別に校則違反じゃなかったはずだ。
現に目の前にいるガラの悪い三人組も、純粋な黒髪じゃない。
「そんなに震えんなよ、別に取って食おうってワケじゃねぇんだし」
「え、取って食わねぇの?」
「え、マジで? 取って食っちゃう?」
「だってこんなにカワイかったら俺らが今見逃したって、どうせいつかなぁ」
は? 取って食うって、オレを?
どうせいつかって、何がいつか起きるんだ?
連中は、突然のことに硬直して一ミリも動けないオレをジロジロ見ながら喋り続けた。
「お前新入生だろ? 名前はなんて言うんだよ」
「入学前にたっぷり可愛がってやっからさ~、俺達だって別に酷いことしたいわけじゃねーのよ?」
「そうそう、お前だって痛いより気持ちイイ方がいいだろ?」
この流れはもしかして、もしかしなくてもそういうことか……!?
県内でも名門と名高い男子校、私立藤堂学院高校の入学式の前日、寮の一角にて。
オレ、斉賀希の人生における最大のピンチが訪れようとしていた……。
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