カモフラー樹

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「大丈夫、絶対に上手くやれる」  俺は自分に言い聞かせるように呟いた。 「三年間は決して無駄ではなかったはずだ」  目線の先には、目を瞠るほどの豪華な別荘が建っていた。外壁のちょうど中心から出っ張るベランダに、俺は意識を集中させる。  ここで暮らす愛しのあの娘。あの娘のありのままの姿を毎日拝みたい。では一体どうすれば? 考えた末に、一つの結論にたどり着いた。 「大きな樹のふりをして、別荘のそばから眺めたら良いんだ!」  馬鹿げた発想だったが、俺はこれしかないと思った。決意を固めてから、早くも三年の月日が流れた。研究を重ね、俺は人間が樹になることができる薬を開発したのだった。  別荘を囲う塀の裏に隠れ、俺が薬をあおった、次の瞬間。身体がまるで石のように固まってしまったかと思うと、足や手から次々と枝が生え、青々とした葉を開いていく。 『実験成功だ!』  声帯を失ったため、心の中で叫んだ。俺の全身は、立派な樹へと変身した。 『カムフラー樹とでも名付けようか。とにかく上手くいって何よりだ。動けないのが難点だが、まぁ良い。愛する彼女の姿を見れたらそれで、お、噂をすれば彼女だ。よしよし、全く俺には気づいてないぞ。ん? 誰かと話しているのか? カーテンが死角になってよく見えないな……彼女は一体誰と何の話をしてるんだ?』
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