第117章 夏の京都はめっちゃ暑い 恋も熱くてやけどする

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そして、さりげなく、自分の兄を客に差し出す妹。 さあ、落とせ。そして自分のモノにするのだ。 彼女はそう心の中で言っている。はず。 あくまで心の中でね。 自分もブレンドを確かめるように飲みながら、ただ微笑んでいるだけだし。 そのうち、クックックって笑いそう。 「佐登美ちゃんは、仕事の方は順調かい?」 横からの声に、妄想を消す。 「はい。全く問題なしです」 「そうか。それはよかった」 「兄さん」 伽耶さんがカップを口元に留めたまま言う。 「何だ?」 「佐登美はお客さん」 「それが?」 全く意に介していない。 そこまでの会話で、伽耶さんは肩を窄める。 私はいいよいいよと苦笑する。 「佐登美ちゃんには、あのオイルやガソリンの匂いはアロマと一緒なのかい?」 ちょっと真面目な目でこっちを見る。 ん? そう言われて、ふと思う。 そうだな…… そっか。 「そうですね」 「なるほどね」 そう言ってまたブレンドを一口飲む岳さん。 「それなら、俺もアロマが好きになるかな」 フッと呟くように言わないでくれますか? 何かココロを揺らされるんですけど。
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