第117章 夏の京都はめっちゃ暑い 恋も熱くてやけどする

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バイクのエンジンが、足下から心地良い咆哮をあげている。 出掛けに綺麗にみがいたから、この子も気分が良いらしい。 ステンレスの部品は夏の陽射しに抗うかのように反射している。ワックスの効いた濃紺のタンクも深く輝いている。 本当は、こんな暑い日にバイクなんて、と思う。 でも、今日も京都へ足が向いてしまう。 ただ、彼の視線に私が映れば、それでいいと思う。 風を切るTシャツの袖はノースリーブのように捲り上げていて、もろに陽射しを浴びているけど、日焼け対策はバッチリ。 この歳になって肌を焼くバカはしない。 髪もただの黒のロングで良かったと思う。 こんな暑さの中でヘルメットを被っていたら、どんなにキメたって無駄。ヘルメットを脱げばペッタリよ。 ただの黒髪ロングだと、後ろに流せば誤魔化せる。 いつもたか子(瀬谷たか子)が、 「なんでバイクが好きなの?」 と、聞いてくるけど、 「だって、好きなものは好きなんだもん」 としか答えられない。 こういうのって、本能が求めているものだから、理屈じゃないのよね。 そんなことを考えているうちに、京都市街に入る。 目的地は右京区。 渡月橋の北の方。 渡月橋を渡って、しばらくして右に曲がってちょっと行って左に入ると、目的の店がある。 店の横の駐輪場に停めると、店の方へ行く。 まずは、バイク屋の方。そこに彼がいる。 「こんにちは」 ぽっかりと空いた店先で、ロードレーサータイプの修理をしていた彼に声を掛ける。
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