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「お、いらっしゃい」
そう言ってバイクを弄る手を止めて、爽やかな笑顔を向ける彼は、奧村岳さん、36才。
私より4つ上。
細めの銀縁メガネを掛けていて、髪は短髪を左気味で後ろに流している。カッコいい。
「バイクの機嫌はどう?」
「この前見てもらってから快調です」
「そっか、それは残念」
「えー?何でですか?」
「だって、それだと佐登美ちゃんのバイク弄れないだろ?」
もうちゃっかりと名前で呼んでくる。
でも、兄貴的であって、女たらしの方ではない。
「弄りたいんですか?」
「まあね」
そこでウインクするのはやめてください。似合っているので。
前にも話を聞いたけど、岳さんは、いろいろ弄るのが好きらしい。
まずはマフラーを変えようよとか言ってくる。
その後、エアクリーナー変えようとか、ハンドル変えようとか、営業とは別の意味で言ってくる。
とりあえず、この子はこのままで気に入っているから、その辺は断っている。
きっと一度任せてしまえば、全く別物の子になると思うし。
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