安倍マリア

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安倍マリア

 放課後、ボクは安倍マリアと待ち合わせ、一緒に叔母のマンションへ向かった。学校からそれほど遠くない。徒歩で十分ほどだ。  叔母の部屋は閑静な高級住宅街にあるマンションの最上階にあった。  もちろんセキュリティも万全だ。 「いらっしゃい。待ってたわ」  叔母(おば)の姫香はドアを開けると歓迎して喜んだ。  部屋には香水の匂いだろうか。しびれるほど甘美で蠱惑的な香りが漂っていた。  リビングへ通されソファへ腰を下ろすと叔母は笑みを浮かべた。ボクの父親よりも十歳以上、年齢(とし)が若い。叔母と言うよりも憧れの綺麗なお姉さんみたいな存在だ。彼女もボクの事を実の弟だと思っているようだ。 「はじめまして。安倍マリアです」 「まァ、可愛らしい。お人形さんみたいな女の子ね。よろしく。占部(ウラベ)姫香よ」 「あ、姫香さん。ほらァ、彼女は安倍晴明(セイメイ)の末裔なんだよ」  横からボクは得意げに彼女を紹介した。 「マジで。私、安倍清明の大ファンなの。大学では陰陽師のことを卒論に書いたくらいよ」  感激のあまり叔母はマリアをハグした。強烈なスキンシップだ。 「いえ、清明の末裔というのは、ただの噂で関係ありません」  困ったみたいにマリアは苦笑いを浮かべた。 「姫香さん。マリアさんの占いはすごく当たるんだ。ワールドカップの予想も日本の勝敗からスコアまで全部、的中させたしね。学校でも日本一の美少女占い師って評判なんだ」  ボクは安倍マリアを褒めちぎった。 「フフ、そんなことはありませんわ」  マリアは謙遜して苦笑した。 「まァ良いわ。占ってほしいのは彼氏のことなの」  さっそく叔母の姫香はテーブルに用意しておいた写真を差し出した。  姫香と彼氏のツーショットだ。美女とイケメンのお似合いのカップルと言えるだろう。見た感じでは優しそうな彼氏だ。 「彼の名前は、志賀健太。合コンで知り合ったんだけど」 「合コンで?」知らなかった。  姫香と彼氏の志賀健太が合コンで知り合ったなんて初耳だ。 「ほらァ、健太にも首のここにホクロがあるでしょ」  姫香は小悪魔みたいに笑みを浮かべ写真の首元を指差した。 「ええェ」  安倍マリアも相槌を打った。 「私もちょうど同じところにホクロがあるの。それで盛り上がったのよ。それから意気投合してラインを交換したの」 「なるほど」  かすかにマリアはうなずいた。 「それから、お付き合いが始まり、婚約したんだけど、健太(むこう)のお母様にお会いして挨拶した直後、なんの前触れもなく婚約を白紙に戻されたのよ」 「ン、そうですか」  
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