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タロット占い
「健太のお母様にお会いして挨拶した直後、なんの前触れもなく婚約を白紙に戻されたんです」
「そうなんですか」
「挨拶した途端、向こうのお母様が顔色を変えたんだけど」
「顔色を?」
「そう、もちろん私がいけないことを言ったのならば謝ると伝えたんだけど。そういうことではないと」
「ワケを訊いても」
「ええェ、何度もワケを訊いても教えてくれなくて。『済まないけど一身上の都合で婚約は白紙に戻してくれ』の一点張りで、しまいには健太と連絡も取れなくなって」
「なるほど」
「私が健太のお母様になにか無礼をしたなら謝るんですけど、理由を教えてくれなければ直しようがないので」
「そうですか。わかりました。では、お手数ですが、お二人の血液型や生年月日と星座を教えてください」
「ハイ、血液型は私も彼もAB型です」
叔母の姫香は少し考えながら応えた。
「ヘェじゃァ、ボクと同じだ」
ボクの血液型もAB型だった。占部家の人はたいていAB型だ。
「私は九月四日生まれの乙女座で、彼は一月十日生まれの山羊座です」
「そうですか。乙女座と山羊座は相性が良いですからね」
「ええェ、そのことで彼とも盛り上がりました」
姫香は視線を伏せて苦笑いを浮かべた。叔母の姫香も星座占いには造詣が深いようだ。
マリアは、おもむろにバッグからタロットカードを取り出した。
なにやら異様な空気が流れた。
「それでは、お二人の未来を占ってみましょう。ただし断っておきますが」
思わせぶりに安倍マリアは言葉を途ぎらせた。
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