タロット占い

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タロット占い

「ただし断っておきますが」  思わせぶりマリアは言葉を途ぎらせた。 「ううゥ!」  一瞬、胸を締めつけられるような緊張感が走った。  タロットカードを手にして、安倍マリアは大きな瞳で叔母の姫香を見つめた。  すべてを見透かすようで(おそ)ろしい眼差(まなざ)しだ。 「ハイ、何かしら?」  姫香も眉をひそめ聞き返した。 「ただし、お(のぞ)みの(かな)うとは限りません」  マリアは叔母の姫香に申し渡した。 「ええェ、わかっています」  姫香もうなずいた。覚悟はできているようだ。 「では気持ちを(しず)めて私と一緒にカードをゆっくりシャッフルしてください」  マリアはテーブルの上でカードを両手で丁寧にかき混ぜ始めた。カードはすべて伏せた状態だ。 「ハイ」  姫香もうなずいて一緒にかき混ぜだした。  ボクはその様子を傍らから見ているだけだ。  やがて、マリアはタロットカードの山から三枚のカードを引いた。まだカードは伏せてある状態だ。 「まず右側のこちらはです」  おもむろにマリアは三枚並べた内の右側に置かれたカードをめくった。  叔母とボクは黙ってそのカードを見つめた。ふたたびリビングに重苦しい沈黙が宿(やど)った。 「【太陽(ザ・サン)】。太陽のカードね」  男の子が白馬にまたがって太陽に照らされている姿が描かれていた。 「太陽ですか?」  ボクの名前のカードだ。俄然、興味がわいてきた。 「ええェ、正位置なので『未来の成功』や『結婚』を暗示したカードです」 「そうですか」叔母はかすかに微笑んだ。 「二人は壁を乗り越えて、明るい未来へと旅立つ予感がしたと出ています」 「ハイ」  ここまでは申し分のないカードだ。  しかしどう考えてもこのまま順風満帆にはいかないだろう。
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