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シークエル
「登録名?」
「そう、占部って、なんとなく小さいときから恥ずかしかったのよ。だから合コンの時、つい安倍姫香って名乗っていたの」
「安倍ですか……?」
「ええェ、それこそ安倍清明の末裔だと偽ってね。最初は頼まれて合コンの数合わせで行っただけで、彼氏を見つける気なんてなかったから個人情報を隠す意味もあって」
姫香は小悪魔みたいに微笑んだ。
「そうですか」
「だから健太も付き合っていた当初は私を安倍姫香だと思ってたらしいの。それが健太のお母様に会って本名は占部姫香だと告げたとき、とっさに顔色が曇ったのよ」
「なるほど、その際に、健太さんのお母様は姫香さんの事を占部優作さんのお嬢様だと気づいたんですね」
「ええェ、でしょうね。割りと珍しい名前だから。占部って。言われてみれば私と健太は顔立ちも似ているわ」
「どちらも父親似なのでしょうね」
「ええェ、そう。マリアの占い通りよ」
「そうですね。ご希望の未来が叶うとは限りませんから」
「わかったわ。それで、もう一度占ってほしいの。もちろんちゃんとお礼はするわ。前回の分も合わせて」
「いいえ、お礼は結構です。私は趣味で占っているだけですので」
「そういうワケにはいかないわ。さァ、お願いします」
「わかりました。では、これからの未来を占ってみましょう」
タロットカードをシャッフルし、その山から一枚を取り出した。
「……」叔母とボクは固唾を飲んで見つめた。
神秘的な月夜のカードだ。
「ザ・ムーン。月のカードの逆位置です」
「月のカード?」
「そうです。正位置ならば、不安定と神秘性を暗示するカードですが」
「そのカードのリバースと言うことは?」
「迷いが解け、夜明けが近づくと言う事を暗示しています」
「夜明けが……」
「そうですね。過去と決別し明るい未来が見えてくる。そういった意味のカードです」
「本当ですか……」
「ええェ、私のタロットではそう言う占いの結果です」
「わかったわ。きっぱりと健太とは別れて新しい恋を探すわ」
「そうですね。きっと少しづつですが状況が好転するはずです」
「フフ、良かった。じゃァ、別れて正解だったようね」
姫香は自嘲気味に笑ってみせた。
「ええェ」マリアもうなずいた。
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