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久しぶりの幼馴染み
私、水野奏美の人生における目標は『安定した人と一緒になる』ということだった。
だから、元カレは私の理想だった。
『公務員』という安定した肩書きに、何でも私を肯定する、優しくて穏やかな人。
このまま一緒に居るのだと、そう思っていた──のは私だけで、彼は私を置いて、出ていってしまった。
*
「へぇ、同棲解消しちゃったんだ」
はん、と鼻で笑いながらそう答えたのは、幼なじみの堀隆一ことタカ君。
私の三つ上の幼なじみで兄的な……むしろ兄と紹介してもいいぐらいの付き合いをしている人で、冠婚葬祭では是非親族席に座って欲しい人だ。
彼はバーで店長をしていて、昨日もそこで飲んでいた。
「ま、そういうわけで独り身に戻りましたとさ」
そして私はグビグビと煽るように、ビールを口に運んでいる。
「『今の奏美との将来が見えてこない』てさ。親の紹介で見合いするんだって」
元カレとは四年間付き合って、二年同棲した。
お互い経済的にも精神的にも依存しない生活で、それは私の理想の同棲生活であった。なのでこれからも変える気は毛頭無かったが、彼はそれが不満だったらしい。
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